2007-11-24[n年前へ]
■オン・レイルズ(廃線)
ランニングをしている時、信号待ちをしていると、足下の変な金属が気になった。錆びた黒い金属が長く伸びている。その長く延びる金属の上を歩いていく老夫婦を眺めると、まるでレイル(線路)の上を歩いているように見える。さらによく眺めてみると、老夫婦が歩く道の先に、さらに「レイル」が延びているように見える。
これは一体なんだろう?と思い調べてみると、その物体は本当に鉄道の「レイル」だった。昭和49年まで使われていたという旧国鉄の蛇松線が、こうして沼津駅から沼津港までの街の中に残っていたのだった。街の中に廃線が残っていて、人がその廃線上を、気づかぬうちに歩いていたりする風景は、映画を写すカメラの中の景色のようで、少し幻想的で綺麗だ。
■海辺
上半身はウィンドブレーカーで、下半身はショートパンツでも、風を気持ち良く感じるくらい暖かい。そんな、晩秋の海辺。n年前の景色を見ながら、こんな文章を思い出す。
さて、大正の末から昭和二十年代まで活躍した木版画家に川瀬巴水という人がある。
巴水のもっとも得意としたものは、暗く清澄な景色で、とりわけて夕焼けの風景を描いたものに、誰が見ても傑作という作物が集中している。
彼の夕暮れには、独特の寂しさが横溢していて、どこか人恋しい感じも漂っている。画中小さく描かれる人物はたいて後ろ向きで黙然と遠くを眺めてい、私どもはその画中の人物となって等しく日本の寂しい夕景を眺めつくす。
林 望「夕映えの渚にて」トランヴェール 2007,11